ペットロスとは
大切なペットを亡くしたことによる悲しみを「ペットロス」と言います。ペットを飼う人が増えた現代ではペットロスは珍しいことではなく、ペットを飼っていれば必ず経験することなのです。
近年ペットロスという言葉が一般的になってきたのは、ペットを飼っている人が増えただけではなく、ペットの在り方そのものが変化してきたことにも理由があります。かつてペットは、番犬や狩猟犬など人の役に立つためのものでした。それが時代が移り変わることで愛玩動物となり、近年では伴侶動物とまで言われるほどに地位が向上してきたのです。また、核家族化や少子化が進むにつれ、ペットを家族の一員だと考える人も増えました。動物医療の発達やフードの改良などによってペットの寿命が延び、共に過ごす時間が増えたことにも理由があります。これらの理由によりペットと飼い主の絆が深まったことで、失ったときの悲しみが大きくなってしまう人が増えているのです。
ペットロスが深刻化する原因
ペットを飼っている以上、ペットロスは避けられません。大抵の場合は時間が経つにつれペットの死を受け入れ、前に進むことができるようになります。しかし中には悲しみを引きずり、それが重症化してしまうケースもあるのです。
ペットロスが重症化してしまうことにはいくつか理由があります。まず考えられるのが本人に理由がある場合です。後悔や自責の念を持ちやすい人は、ペットロスが重くなりやすいと言われています。仕事で忙しく留守にしがちだったせいであまり構ってあげられなかった、もっとしっかり世話をしてあげればよかった、と自分を責めてしまうと、悲しみから立ち直ることができず自分を責め続けてしまうのです。
周囲の環境がペットロスを深刻なものにしてしまうこともあります。ペットに対する考え方は、人によって違います。家族として大切に思っている人もいれば、あくまで動物であると一線を引いている人もいます。深く悲しんでいるときに、家族や友人から支えを得ることができなければ、より回復が難しくなってしまうのです。
事故などでペットが急死してしまった場合もペットロスは重症化しやすくなります。心の準備ができていなかった分、衝撃が後を引くことになります。
ペットロスを乗り越えるためには
ペットロスを乗り越えるために大切なのは、悲しみを我慢するのではなく、心のまましっかりと悲しむことです。周囲の理解が得られず「いつまでもペットのことで悲しんでいられない」と我慢してしまうケースも多いですが、自分の感情に嘘を吐くとそれが後々尾を引くことになります。涙が出るなら、我慢せずに泣くことがペットへの供養にもなります。
誰かに悲しみを打ち明けることも役立ちます。同じようにペットロスを経験した人や、話を聞いてくれる友人と話すことで、気持ちが落ち着き、ペットを失ったことに対する孤独感を和らげることができます。
新しいペットを飼い始める、というのも回復の手段です。研究では、新しいペットを飼い始めた人の方が、よりペットロスからの回復が早いことが分かっています。しかしこれは人によって効果が変わってくる方法です。ペットを亡くしたばかりで悲しみが深いうちに新しいペットを迎えてしまうと、余計に症状が悪化することも多いので、タイミングをしっかりと見極める必要があるでしょう。
周りの人がペットロスになったら
自分の周囲の人がペットロスに陥ってしまったら、その気持ちを否定せず受け止めてあげるように努めましょう。「たかがペットのことで」と悲しみにギャップを感じ、戸惑ってしまうこともあるかもしれません。しかし回復を手伝うためには、一緒にいて心の支えになってあげることが大切なのです。相手の価値観に合わせて話を聞き、ペットを亡くした人が心のまま悲しむことができるよう、環境を整えてあげましょう。
何を言っていいか分からないときは、無理に言葉をかける必要はありません。ペットロスで悲しんでいる人に必要なのは励ましではなく、一緒に悲しみを分かち合う共感の気持ちです。安易な励ましはむしろ悲しみをより深くしてしまうかもしれません。すぐに新しいペットを勧めたり、立ち直らせようと叱咤激励するのも避けましょう。相手の孤独感を深めてしまったり、悲しいと思う気持ちを仕舞い込ませてしまいます。