コラム
イベントレポート

保護犬と人をつなぐ里親会

2019.04.03

 

ペットと人のより良い暮らしに貢献したい

観葉植物や壁に飾られたグリーンがお洒落な日比谷花壇本社3Fの『KOTO café(コトカフェ)』が、3月16日(土)に普段とは違った賑わいを見せた。
通常では社員や取引先の方しか入ることのないこの空間に、13匹の元気な保護犬たちが一斉に集まったのだ。

発端は『日比谷花壇のペット葬』を運営するライフサポート事業部スタッフの “ 葬儀だけに留まらず、ペットと人のより良い暮らしに貢献したい ” という想いからだった。
ペットと共に暮らすことは、最後までその命に責任をもつことに他ならない。日比谷花壇のペット葬は、亡くなったペットと愛するペットを失ったご家族のために、お花で彩るペットのお葬式を2018年11月22日(わんわんニャンニャンの日)にスタートさせた。飼い主とペットとのより良い暮らし、より良い関係に貢献したいという想いを持って取り組む中で、業界の枠を越え、東京都に登録された譲渡対象団体でもあるNPO法人アルマと共に、保護犬里親会を開催する運びとなった。

 

 

愛護団体NPO法人アルマと共に

NPO法人アルマは、主に関東圏の動物愛護センターに保護された犬猫を引き取り、新しい飼い主へ譲渡する活動を行なっている。活動の主軸は、センターに収容された犬猫の “ 最後の砦 ” となり、1匹でも多くの命を繋げることだ。
2018年アルマの引き取り実績は、犬182匹・猫97匹 / 合計279匹。引き取り後は、動物病院で必要な検査や治療を行い、去勢・避妊手術やマイクロチップ装着、サロンでのトリミングなどを行なっている。約100件のボランティアが登録され、70~80匹の犬猫のお世話をしている。また、都内にアルマ東京ティアハイムという都市型シェルターを運営し、保護された犬猫の一部は、里親が見つかるまで一時的な待機先としてティアハイムで暮らしている。こちらは待機場所としてだけではなく、捨て犬・捨て猫の現状を知って貰うために、動物福祉の啓蒙活動の一環として、開かれたシェルターを目指している。
そういったオープンシェルターや、定期的に開催する里親会を通じて、NPO法人アルマはこれまで保護された犬猫と人との新しい縁をつないで来た。

 

 

保護犬たちの眼差し

会場の『KOTO café(コトカフェ)』では、来場者やスタッフにコーヒーやカフェラテが振る舞われた。コーヒー豆の落ち着いた香りが会場内を包み込んでいる。
13匹の保護犬たちは、皆、預かりスタッフ(保護犬を一時的に預かり、お世話をしているボランティアスタッフ)の側で、無邪気に寝転がったり遊んだりしながら来場者を出迎えている。人もペットもリラックスし、くつろいだ和やかな空気が流れていた。

 

 

保護犬たちを見ていてまず驚かされたのが、その人懐っこさと行儀の良さだ。
里親会にはじめて訪れたというAさんも「里親会に来たことがなかったので、病気や問題を抱えたワンちゃんがいるのかと思っていたけど、みんな本当に元気で可愛い子ばかりでびっくりしました」と驚きの声を漏らした。しかし、それは同時に「元気で可愛いワンちゃんたちなのに、こんなにたくさん保護されているなんて」という、悲しい現実に直面した正直な思いでもある。

 

 

保護犬たちは笑顔とも受け取れるような生き生きとした表情で、はじめて会う来場者とも気さくに触れ合っている。大きな声で吠えることも、噛み付くようなこともない。自ら遊んでほしいとせがむわけでもなく、来場者の様子を感じ取りながら、それにあわせてコミュニケーションを取っているように見えた。
「犬は賢いので、世話をして自分を守ってくれる人はすぐにわかります。だから出会った時もすぐになついてくれます」と預かりスタッフは言った。
保護されるまでにどのような経緯があり、どのような悲しみを持っているかは、犬それぞれ違うだろう。それでも、犬は純粋な眼差しで人を信じ続けている。

 

 

人間の都合だけでなく、犬の立場になる

ただ、その一方で、無論最初は知らない人を怖がる犬もいる。そのような犬に対しても、アルマのスタッフは愛情を持って応えている。「吠えたり、噛んだりするには、それなりの理由があります。犬は人間のようには喋ることが出来ないので、行動でしか表現できません。噛むから吠えるからと、一方的に悪いことのように犬を怒ったり叩いたりする方もいらっしゃいますが、犬を飼う方には、犬の立場に立って理解しようとする努力をしていただければ良いなと思っています」
吠えない方が良いし、噛まない方が勿論良い。けれど、人間の都合だけではなく、犬の立場になって考えられる人がもっと社会でも増えていけば、保護される犬の数も今より減るのかもしれない。

 

 

企業で開催する里親会

最近はマスメディアでも度々取り上げられるようになった保護犬猫だが、今回の里親会に訪れた人たちの中にも「最近テレビで保護犬の番組を観て」と保護犬猫の現状を改めて知り、「飼うなら保護犬で、と考えるようになった」という人たちもいた。
そのように、保護犬猫と一緒に暮らそうと考える人たちが徐々に増える一方で、しかしまだまだ保護犬猫と出会える場所は限られている。
今回、日比谷花壇という “ 花とみどりを通じて豊かな社会づくりに貢献する ” 会社で開催された里親会について、来場者からも驚きの声がきかれた。
「お花が好きなので日比谷花壇のことは以前から知っていました。でも、本社に行ける機会は滅多にないですし、こんな素敵なところなのだと知ることができて嬉しかったです」という声や、「企業でやる里親会に来たのは初めてでした。でも、すごくアットホームな感じで良かったです」という、グリーンが溢れるカフェスペースならではの、ゆったりとリラックスした雰囲気の中で犬と触れ合えたことに満足した声もきかれた。

 

 

保護犬と人との出会いをつなげる

今回の里親会では、13匹のうち2匹の保護犬に里親の申し込みがあった。
里親会の開催時間は僅か3時間。そんな限られた時間であっても、小さな機会を生み出すことが、犬と人の人生を大きく変えるきっかけへとつながる。
「こんなに可愛いワンちゃんと暮らせば、一緒に外へ出掛ける機会も増えて、私たち夫婦も今より元気になれると思った」と、申込者の方のひとりは言った。

里親会は、保護犬のためだけのものではなく、人間にとっても、前向きに生きるためのきっかけとなる希望の場所と言えるのかもしれない。

 

 

■特定非営利活動法人ALMA(アルマ)
http://alma.or.jp/

写真:柏原 真己